アンダーウエイトとオーバーウエイト

ベンチマークと同じく、投信の購入者には何の意味もない「ことば」である。
  1. アンダーウエイトはベンチマークの時価総額構成比率に対して低めの投資割合にすること。
  2. オーバーウエイトはベンチマークの時価総額構成比率に対して高めの投資割合にすること。
この言葉が使われる場面はつぎのようなものである。
  1. 円安基調を予想1)して、円のアンダーウエイトを維持した」という場合。
    資産を安い通貨(価値の低い通貨)で持つことは資産の減少につながる。資産は強い通貨で保有することがファンドの資産の増強に資する2)
    円安(ドル高やユーロ高など)ということは、円は安い通貨である。この場合、円で保有している資産を減らして(=これがアンダーウエイトである)、他の強い通貨で資産を持つことが要請される。
    NOTES
    1) 円安・円高の予想はすべて状況によって変化する。たとえば、円キャリー取引解消の兆候があらわれてくれば、円高になる可能性があるので、円のアンダーウエイト幅を縮小するということにもなる。
    2) 保有している投信などの解約(換金)時の円高・円安と混同してはいけない。資産価値としてみるかぎり強い通貨でもつことがそのファンドの資産価値を高める。しかし、換金時には円安の方が円での手取り額が大きくなるので、その時は円安の方がいいことになる。

  2. ユーロ圏の好景気を反映してユーロが強含むとの予想から、オーバーウエイト幅を引き上げた」という場合。
    ユーロが強含む(円安やドル安など)ということは、ユーロは強い通貨(価値の高い通貨)である。資産はこの強い通貨で保有すること(=これがオーバーウエイトである)が要請される。
簡単にいえば、「強そうな通貨」で運用しようという投信運用会社の単なる心構えにすぎない。このようなものを、難解な「カタカナ」で言い換えて「ハク」をつけた程度のものである。


使用例

これらの言葉は、結局は聞こえのよい「言い訳」程度に使われるものでしかない(笑)。
たとえば、次のような文言は投信の報告書の常套文句であるが、その意味がすぐにわかるような投信の購入者はそう多くはないだろう。

格付けの低い社債アンダーウェイトしたことがマイナスに作用した。
これは格付けの低い社債の収益率(パフォーマンス)が良かったのに少量しか保有していなかったので(これがアンダーウェイト)、損をした(より多くの儲けを逃した)ということである。要するに、「下手をして損をした」ということなのである。


金利が上昇(債券価格は下落)したイタリア国債オーバーウェイトとしていた。
価格が下落するようなイタリア国債に、お客様から預かった資金を重点配分して(これがオーバーウェイト)、その資産を減らしてしまった。損害をこうむったということである。

そして、重要なことは、投信会社で投信の運用をしているヒラ社員が、その能力不足で「ドジ」を踏んで運用資産を減らしたことにすぎないにもかかわらず、いかにも客観性を装って「他人ごと」のように書いている点である。

つまるところ、これらの「カタカナ語」は責任逃れのため、責任の所在を曖昧にするため、その無能隠しのために便利に使える言葉にすぎないのである。そして、こういう言葉を使えば責任感を感じないということが、「さらなるドジ」への「布石」にもなっていくのである(笑)。


重要
銀行、証券会社、保険会社には、合法的に顧客をごまかすテクニックが多数用意されていることに注意しよう(笑)。