会社分割

会社分割とは、1つの会社を法律上独立した2つ以上の会社に分けることで、企業の組織再編行為のうちのひとつである。すなわち、事業に関する権利義務を、新しく作る会社または既存の会社に承継させることが会社分割である。
事業に関する権利義務を、新しく作る会社に承継させるものを新設分割といい、既存の会社に承継させるものを吸収分割という。


会社分割の目的

会社分割は主に次のような目的のために行われる1)
  1. 経営の合理化
    経営効率の低下した会社が地域部門別または地域別に分割して効率的経営をはかる。
  2. 有限責任の利用
    新たに進出しようとする事業や地域に予想されるリスクを子会社の利用によって限定する。
  3. 不採算部門の分離
    業績不振の事業部門を別会社に移し収益率の向上をはかる。
NOTES
1) 龍田節「会社法大要」(有斐閣)473p。


吸収分割の例

2008年8月にイオン株式会社が、すべての事業1)をその完全子会社であるイオンリテール株式会社2)に承継させる吸収分割が行われた。

このときに、イオンリテール株式会社は普通株式99800株を発行し、そのすべてをイオン株式会社に割当て交付している(会社法758条第4号)。この相当性については、イオンは完全親会社であり、この吸収分割は分社型吸収分割であるから、この株式数は相当であるとしている。

これによってイオン株式会社は、事業持株会社3)から純粋持株会社4)になった。イオンの会社分割の場合はこれが主な目的であったようである。上の学者先生の分類のどれにもあてはまらない(笑)。
NOTES
1) 株式を保有する会社の事業活動に対する支配・管理とグループ運営に関する事業は除く。要するにイオンの小売事業を承継することになる。
2) この会社は以前は「イオンホールディングス株式会社」であったが、それが商号変更したものである。そのときはイオンの商号の保全だけを目的とした会社であった。吸収分割前は資本金1000万円、資本準備金0円、利益準備金0円であったが、吸収分割後には資本金499億9000万円、資本準備金125億円、利益準備金0円になった。
3) 事業持株会社とは、各種の事業を行いながら、子会社等の株式を保有し、グループ経営を行う会社をいう。
4) 純粋持株会社とは、直接事業は行わずに、子会社等の株式を保有し、グループ全体のコントロール機能を持つ会社をいう。