資料-アメリカの長期金利

長期金利の指標とされる10年債利回りが2.852%まで上昇した(国債の価格は下落)。4年ぶりの高水準である(2018/02/03)。
1月の雇用統計が市場予想を上回ったが、これは景気が過熱していることを示す。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測1)が広がっていることが背景にある(その先取りといえる)。
NOTES
1) アメリカは当面は主要政策金利を年1.25~1.50%に据え置くが2018年3月には利上げを検討するという観測がある(2018/02/01)。

しかし、金利の上昇は株式市場には悪材料になる。企業の金利負担が増え収益を圧迫する、低金利の資金で株式に投資している投資家にも負担増になる。

つまり、アメリカの景気の過熱はインフレをひき起こす懸念がある。そのためには金融引き締めだ、利上げだ、ということである。金利が上がれば(その気配があれば)株価は下落する。アメリカ株が下がれば当然日本株も下がる。日本の株の取引の7割は外国の投資家によるもの(投資判断の同一性)だからである。
ちなみに、2018/02/06の東京株式市場の日経平均株価は、前日の終値と比べ1071.84円安の21610.24円だった。問題はこの株価の下げが一過性の調整で終わるのか長期的な下げトレンドの始まりなのかという点である(今はわからない)。ただし、株価の変動要因は金利だけではない点に注意。
- 2018/02/06 -


資料-日本の長期金利

長期金利の指標である新発10年債(349回債/表面利率0.1%)の終値利回りは0.09%。これは半年ぶりの高い水準である。
ドイツやアメリカの国債価格が大きく下落(利回りは上昇)した。そのことの連想から日本の国債も売り注文が増えただけである。日銀に管理されているに近い日本の国債の利回りが市場の動向で上下することはほとんどない。

この米独の国債価格の下落(債券売り)は、欧州中央銀行(ECB)が金融政策を早期に正常化するとの観測による。緩和策を縮小する→国債などの買い入れを減らす→国債の価格は上がらないだろう→売ってしまえ→価格は下落/利回りは上昇である。
と同時に、金利上昇が企業経営を圧迫し、景気を冷やすとの懸念から株式も売られやすくなる(株式売り)。
- 2018/01/30 -


アメリカの利上げ/一般論

アメリカの大統領も正式に代替わりした(2017/01/20)。この先どうなるか不明だが、一般論は押さえておく必要がある。
  1. 為替相場への影響
    アメリカの金利が上がれば資金を金利の高いドルで運用した方が儲かる。円を売ってドルを買う動きが強まり円安ドル高が進む。
    日本は日銀がゼロ金利政策を続けているので1)、今後は日米の金利差がさらに広がり円安ドル高傾向になる。
    ただし、これは経済の自律性にまかせた場合のことで、政治の側から横槍を入れてくると話は異なる。
    アメリカ第一を唱えるトランプ政権が自国の輸出に不利なドル高円安はもちろんドル高一般を放置しておくことは考えにくい。
    NOTES
    1) トランプ政権の経済対策への期待感から2016年11月から米国の長期金利が上昇し、日本でも長期金利の上昇傾向が続いている。そのため日銀は長期国債の買い入れを増やし、長期金利の上昇を防ぐことに躍起になっている(0.09%~0.07%のレンジ)。

  2. 日本経済への影響
    輸出を中心とする企業はドル建ての利益を円に換算したときの採算が良くなり業績は向上する。輸入が中心の企業は原材料価格が上がり収益は悪化する。一般家庭には輸入食料品や原油(ガソリン・灯油など)が値上がりし負担が増える。
    日本は輸出企業が多く企業業績が上向く。円安は日本株にプラスだとして、輸出企業を中心に株価は上がりやすくなる。

  3. 世界経済への影響
    ドルは基軸通貨として世界中で使われている。その利上げは世界各地で大きな影響を及ぼす。単にアメリカの国内問題だけに収まらない。
    アジアなど新興国に投資されていた資金が金利の高いアメリカに逆流する可能性がある(資金の引き揚げ)。資金流出でその国の景気が悪くなる。
    その結果、自動車や機械などを新興国で販売している日本のメーカーの製品の売れ行きは鈍ることにもなる。
    また、就任前の言動をみる限りアメリカのトランプ大統領の政策は思いつき的・八つ当たり的で経営への不当介入が目立つ。経済情勢の不透明感は強い。それが明確になるまで投資は控えられることが多い。
- 2017/01/21 -





参考/長期金利の下落と上昇(a1)
参考/長期金利の動き(a2)
長期金利(esk)