送別歌

正月になると昔の知り合いに会えたりするのが実になつかしくて楽しいものである。久しぶりに高校時代からの友人のT君と会う。「友あり遠方よりきたる。また楽しからずや」である。
しかし、去年は思いもかけず、そういう知り合いの遠い世界への旅立ちをいくつか経験してしまった。

李白の「送友人」(友人を送る)という詩がある(岩波文庫「唐詩選(中)」62p)。
短いフレーズで簡潔に情を表す。この点では漢詩にまさるものはない。

送友人 李白

青 山 横 北 郭
白 水 遶 東 城
此 地 一 為 別
孤 蓬 万 里 征
浮 雲 遊 子 意
落 日 故 人 情
揮 手 自 茲 去
蕭 蕭 班 馬 鳴

友人を送る 李白
青山 北郭に横たわり
白水1) 東城を遶(めぐ)る
此の地 一たび別れを為さば
孤蓬(こほう)2) 万里を征(ゆ)かん
浮雲(ふうん)は 遊子3)の意
落日は 故人4)の情
手を揮(ふる)って茲(ここ)自(より)去れば
蕭蕭(しょうしょう)として班馬(はんば)5)鳴(いなな)く
- 岩波文庫「唐詩選(中)」62~63p -
NOTES
1) 清らかな川の流れ。
2) ゆくえ定めぬ旅人。
3) 旅人。
4) 昔からの友人。
5) 班馬は別れを惜しんで前に進みかねている馬のこと。

これも李白の別れの詩である。

黄鶴楼送孟浩然之広陵

故 人 西 辞 黄 鶴 楼
烟 花 三 月 下 揚 州
孤 帆 遠 影 碧 空 尽
惟 見 長 江 天 際 流

黄鶴楼にて孟浩然の広陵にゆくを送る 李白
故人西のかた黄鶴楼を辞し
烟花三月揚州に下る
孤帆の遠影碧空に尽き
惟だ見る長江の天際に流るるを

- 2007/01/01 -



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