正岡子規と柿

例年とくらべて今年は気象的にいろいろ変事があったようで、秋も早いようである。見るともなしに「図書」2009年10月号(岩波書店)をパラパラ見ていたら、俳人の坪内稔典という人の「俳人と大泥棒」というエッセーが目にはいる。

正岡子規の「 柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺 」という俳句に出てくる「柿」は御所柿という品種であるらしい。専門家というものはいろいろなことを調べるのが好きなようである。

柿といえば秋の味覚の代表格である。と同時に日本の特産品であるといわれている。とはいえ北海道では柿は栽培されていない。この俳句で有名な御所柿も今では見かけることもない。柿の主流は富有柿や次郎柿などになっている。これも「政権交代」時代の流れであろうか(笑)。

ところで、子規の有名な俳句も夏目漱石の「 鐘つけば銀杏いてふ散るなり建長寺 」という俳句に影響されたものであるという指摘もおもしろい。なるほど、似ているといえば、たしかに句の形式のようなものは似ているようである。しかし、もっと面白かったのは、次の点である。
御所柿を食べた奈良への旅はその旅費を漱石に借りたのだが、子規は俳句においても親友・漱石の助力に与ったとい言ってもよいかも。
- 坪内稔典「俳人と大泥棒」(岩波書店「図書」2009年10月号52p) -
こういう裏話もなかなか興味をそそるものである(笑)。子規といえば夏目漱石の有名な小説の「三四郎」で佐々木与次郎として出てくる(子規がモデルである)が、なかなかこの二人はいい「お友だち」であったようである。こういうのをみると、ついつい昔の友だちなどを思い出してしまうのも秋ならではである。

- 2009/10/04 -