蚤しらみ馬の尿する枕もと (芭蕉)たしかに印象に残る俳句である。その昔、中学2年の国語の教科書で覚えたときには、この部分の「尿」は「しと」という読みだった。地図で見ると陸羽東線(奥の細道・湯けむりライン)の鳴子温泉駅と中山平温泉駅の間に「尿前」と書いて「しとまえ」と読む地名または「尿前の関」がある。ここから「尿」を「しと」と読むというのが以前の通説だった。しかし、今ではこれは「ばり」と読むようである。芭蕉がその読み方として「ばり」とルビを振っている本が見つかって以来その読み方になったという1)。
しと【尿】「ばり」というのは当時でいえば新しい語または口語だったのかもしれない。
名 小便。「この宮の御尿にぬるるはうれしきわざかな」[紫式部]
- 久松潜一 佐藤謙三 編「角川 新版 古語辞典」583p -
ばり【尿】
名 小便。ゆまり。「いばり」「ゆばり」
ばりをこ・く 小便をする。「ええこのほてっぱらあ、またばりをこきゃあがる」[滑・膝栗毛]
- 久松潜一 佐藤謙三 編「角川 新版 古語辞典」962p -