一般競争入札と指名競争入札

国や地方公共団体が契約を締結する場合の方法として、入札(一般競争入札/指名競争入札)、随意契約、せり売りなどがある。

入札は国や地方公共団体が契約を締結する場合の基本的な方法である。


一般競争入札

契約に関する公告をして、入札に参加できる者を限定せず不特定多数人に競争させ、最も有利な条件(通常は最低価格)を提示する者との間で契約を締結する方法。一般競争入札が原則的な方法である。相手方を特定しない点で指名入札や随意契約とは異なる。

この方法は、資力・信用の点で適当な者と契約を締結できるという保障がなく、手続きも煩瑣で費用も割高になり、また談合が行われやすいという欠点がある。


指名競争入札

入札に参加できる者を一定の資格を有する複数の者に限定して競争入札をすること。相手方を限定する点で一般競争入札と異なり、複数の相手方を定める点で随意契約と異なる。

この方法は、指名によって参加者の範囲を特定するため、信用・誠実さの点で不適当な者を排除でき、手続きも簡単になるが、その反面、指名が固定化し特定メンバーに偏るという欠点がある。

ちなみに、国の場合この指名競争入札の比率が9割を占めている。そのため同規模、同品質の公共事業が一般競争入札で実施するより3割ほど高くなっているとの批判がある。



水清ければ魚住まず
指名競争入札は、広範囲で競争する手間が省け、特に地方では安定的または独占的に仕事にありつけるため、業者側にとっては「ウマ味」が多い。裏を返せば、税金の無駄遣いになるということでもある。
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「東国原知事にヤジ 反「入札改革」で業者3500人集会」
県発注工事は一般競争入札が拡大。今年1月からは、ほぼ全工事が対象となる250万円以上に範囲を広げた。昨年度の落札率83.9%は06年度の93.4%から急減した。県建設産業団体連合会の永野征四郎会長は「ほとんどの企業が赤字覚悟で受注している。業界はこれ以上ないところまで疲弊している」と訴えた。最低制限価格の引き上げ、指名競争入札の一部復活などを求める決議文を採択し、知事らに手渡した。
- 朝日新聞2008/09/02 -
一般競争入札では県外の業者も参加できてしまうが、指名競争入札で県内の業者だけを指定すれば県内の業者は潤うというわけである。また、同一県内であれば談合もしやすい。業者には濁った泥水の方がなにかと都合がいいようである(笑)。

これは中央省庁についても同様である。業者にとっては「税金」ほど「おいしい」ものはない。
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総務相、競争入札の実態調査指示「現実は1社入札も」
原口一博総務相は19日午前、中央省庁が発注する事業の入札について、「競争入札に見せかけているようなものもいっぱいあるのではないか」と述べ、総務省に実態調査を指示する考えを示した。TBSの番組での発言。原口氏は「(2社以上の競争入札でも)現実は1社入札で、本当は100万円で済むもの(事業や物品)が、150万円で買われている」と語った。参加業者間の談合が疑われる事例もあり、原口氏は同省行政評価局などを通じて各省庁の実態の洗い出しを急ぐ考えだ。
- 朝日新聞2009/10/19 -


随意契約

国・地方公共団体の契約締結の方法のひとつ。契約の性質又は目的が競争入札に適しない場合や競争入札にすることが不可能であったり不利な場合などに、競争をさせないで任意に特定の相手方を選択して契約を締結すること。

この方法は、契約の相手方の資力・信用・技術を熟知して相手方を選択するから契約目的が簡単に達成できるが、反面、誰を契約の相手方とするかで情実に左右され公正を害するおそれがある。

社会保険庁が天下り役人を送り込んだ会社と随意契約して常識ハズレの価格で多額の随意契約を締結していた(年金原資の食いつぶしになる)ことは再三にわたって報道されている。
NOTES
読売新聞(2006/06/13)によると、国の随意契約は契約総額の53%をしめ(約3兆9000億円)、そのうち6割が不適切であるという。随意契約全体のうち、約2兆2820億円は公益法人や天下り先の民間企業と結んだものであり、政府は、このうちの1兆4584億円分(64%)は会計法から逸脱した不適切な契約と判断した。

インチキ随意契約の手口

入札には手続き面で時間がかかるため、不正な随意契約がなされることが多い。しかし、随意契約は業者間の競争を阻害し、行政費用の高コスト化(税金のムダづかい)を招くことになる。また、行政がノーチェックで公金を勝手に使用するという事態を招くことになる。
  1. 分割発注
    一般競争入札を回避するため、随意契約が可能になる金額になるように、その金額を意図的に分割して発注すること。

  2. 架空工事
    費用のつじつまを合わせるために架空の工事をでっち上げること。
大阪市の例で次のようなものがある。
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2007~2008年で191件のインチキ随意契約が発覚している。このうち、もっともインチキが多かった環境局の86件のうち、分割発注が74件、架空発注が12件だった。
環境局の規則では、積算価格100万円超の工事は入札が義務化され、40万円超の工事は施工後に現場確認が必要である。
積算価格298万円の駐輪場改修工事では、これを99万円(入札しなくてもよい)と偽って特定の業者と随意契約し、37~28万円(事後確認しなくてもよい)の架空工事5件をでっち上げていた。これによって、業者への支払額と積算価格とのつじつまを合わせていた。
- 読売新聞2009/07/30 -


せり売り

国・地方公共団体の契約締結の方法のひとつ。買受者が口頭で価格の競争をすること。はじめから金額が公開されて価格が定まる点が他の方法との大きな相違点である。

動産の売り払いには適するが、他の契約には適さないのが欠点である。

せり売りは、市場などで仲買人が「手サイン」でする昔ながらの売買を連想するが、市役所などが税金滞納者の財産を差し押さえて、インターネットのYahoo!などのオークションサイトに出品するのもこれである。

- 2015/05/31 -