「法の支配」と「人の支配」

少し前に面白いニュースがあった。安倍総統(旧首相)が国会で「法の支配」の対義語を聞かれて、知らなかったという話である。カテゴリー的には「低能いびり」に属するが、国のトップにこんな無知蒙昧暗愚のサルが居座っているということを天下に知らしめた点は多少の意味があったのかもしれない。権力を持つ者に対してはいくら批判してもしすぎるということはないからである。
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安倍首相また国会で赤っ恥「法の支配」の対義語を知らず
6日の参院予算委員会。立憲会派の小西洋之参院議員から、「“法の支配”の対義語は何か」と問われ、まったく答えられなかったのだ。質問された安倍首相は、チンプンカンプンだったのだろう。答えられないから答弁に立てず、しばらく椅子に座ったまま。結局、「まさに、この反対語と言うよりも、法の支配、え、ということを申し上げているのはですね、いわば、あーこのー、この海、、、繁栄の海……」などと、シドロモドロになり、最後まで“法の支配”の対義語は答えられずじまいだった。
- 日刊ゲンダイ2019/03/07 -
「法」をねじまげて、自分の好き勝手に「お友達優遇」政治ばかりやっている割には、自分のやっていることが「法の支配」または「法律による行政」とはかけ離れたものだということを少しも認識していなかったということである。どおりで、いくら歪んだ不公正な政治を批判しても「蛙の面(つら)に小便」だったわけである。

さて今日は、この低能のボスにして、この末端役人ありという例を体験してきた。去年、還付申告というのをすれば先に取られた税金のうちいくらかが返ってくることを知った(ウソツキ佐川のいた国税庁にたとえわずかでも献上するのはシャクにさわる/笑)。それで今年も締め切り日にはまだ少し早いが、ここ数日は天気が不安定なので、雨の降っていない今のうちにということで、税務署まで行ってきた。
かんぷしんこく【還付申告】 還付金の還付を受けるために納税者が行う申告のこと。所得税において、例えば雑損控除や医療費控除の適用を受けることにより、既に納付された源泉徴収税額又は予定納税額がその年分の所得税額を上回ったときは、確定申告を行ってその上回る額の還付を受けることができる(所税一三八~一四二)。
- 内閣法制局法令用語研究会編「有斐閣 法律用語辞典」(有斐閣)197p -
これと同じことは去年もやったので、今年も同様にそれをマネして書き上げる。一回目の去年はどこに何を書くのかはいろいろ苦労したが、二回目ともなると「先例踏襲」という省力化メカニズムが使えるのでラクである。ほとんど時間もかからない。それを出そうとすると、係員が「※※の通知書(書類)が添付されていない」と言う。ン!去年はそんなものは不要だったのに、今年は少し様子がちがう。内心あわてる(笑)。

確かにこの係員のいう「お知らせ」は郵便できていた。しかし、それを添付せよとはどこにも書いてなかった。それで去年は添付せずに出したが、それでスンナリ受付が終わった。ところが今日は違った。それがないと受け付けられないという。去年はそんなものは不要だった。添付もしていなかった。それでも受付されたし、特別の「お話」もなくフリーパスだった。こんな押し問答が2~3回続く。相手はバカのひとつ覚えのように「その添付が必要だ」の一点張りである。

去年(の受付係員)と扱いが違うのはどういうワケなのかと聞いてもムニャムニャと不得要領である。そこで、どうしても添付せよというならまた出直してきてもいいが、では、この「申告の手引き」のどこに「その書類を添付せよ」ということが書いてあるのか、それを教えてほしいと、相手にその冊子(税務署が確定申告時に配布しているもの/税務署に山積みされている)を見せる。係員がパラパラと探すが見つからない(自分も書く前に何回も確認したがそれはなかったはずだ)。とりあえず、後に並んでいる人も多かったせいか、今日は受け付けますということになった。

ところで、税務行政は、これがカネにからむものであるだけに、客観的、画一的、定型的なものでなければならず、またある意味で機械的な平等対応が求められるものの代表である。それでこそ法的安定性(予測可能性)が保たれることになる。この点から見ると、今日のこの係員(または全体として税務署)の対応はどうみても問題がある。
  1. 人によってバラバラな対応。
    去年と今年、ほとんど同じことをしているのに、係員によって対応が違うということは問題である。あの人は「書類がいらない」、この人は「書類がいる」では、こちら側はどうするのがいいのかわからない。税務行政(といっても書類の添付という手続き面にすぎない)が、税務署内の人によってまるで正反対になるのは法的安定性を害する。こちらも対応に困る。

    偽装、隠蔽、デタラメ、インチキ、うそ、ペテンが常態化した安倍政権そのままの体質がこんなところにも表れているようである。すなわち租税法律主義という厳格な規定による「法による(客観的な)支配」ではなく、「人による(主観的な)支配」に堕していることになる。それにしても「アベ毒」という病原菌は出世をエサにしているだけあって役人に取りつきやすい特徴を持っている。それに感染した「人の支配」はこんなところにも起きているようである(笑)。

  2. マイナンバーの問題。
    それと同時に感じたことは、マイナンバー制度は本当に有効に機能しているのかという疑問である。銀行、証券、生命保険などからマイナンバーを飽きるほど聞かれて、何度も知らせてある。「社会保障・税・災害対策の行政手続き」に使うという触れ込みである。

    これは明らかに「税」に関するものである。そうだとすると、シロウト目には関係するところにはマイナンバーを知らせてあるのだから、税金を取った、払ったなどの情報は一元管理されていると思ってしまう。それがまともに機能していたら、今さら「紙の書類」などの出番はないように思うが、これを要求する「人」がいるとすると、この制度はそこまでには達していないのかもしれない。

    マイナンバーは、役所の便宜に偏し、庶民にとっては何の意味もなくむしろ害の方が多い。こういう時の煩雑さの解消になるのが唯一の意味である(それ以外には何のメリットもない)。しかし、その運用に疑問符がつく出来事である(と感じた)。
昨今マスコミをにぎわしているデタラメ・インチキ行政であるが、こんなところにも「行政の劣化」が見えたようである。

- 2019/03/11 -