入試問題投稿事件/インチキ記事とゴミ識者

世間を騒がせた入試問題のネット投稿、新手のカンニング事件もなんとか犯人が見つかって解決したようである。これにからんで大衆マスコミにはいろいろな記事がでてきた。その中で気になったものを少し。新聞の社説で最も反応が速かったのが読売新聞と京都新聞だった。
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投稿の背後には、知識を記憶に刻みつける努力や、試行錯誤しながら正解を導く苦労を回避して、ネット上の第三者に簡単に助けを求める安易な考えが垣間見える。
大学生のリポートでも、ネット上にある他人の論文などを、そのままコピーして貼り付ける「手抜き」が問題視される昨今だ。
- 京都新聞2011/02/28の社説 -

ネット社会が発達したいま、何か分からないことがあれば、自分で苦労して調べなくても、投稿サイトに質問を投げておけば、だれかが教えてくれる。回答は正解のこともあれば、間違っていることもある。それでも、他人の回答に「ただ乗り」してしまう。
- 朝日新聞2011/03/01の社説 -
こういう低能人種が毎日毎日インターネットの主役になって飛び回っている。これが日本のIT教育という「手先」教育のもたらした現実なのである。

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書き込みには、設問の数字、アルファベット、漢字、ひらがな、記号が入り交じっている。これらに加え、「塾で出された問題です」「解答だけでなく途中計算もよろしくお願いいたします」などと書かれており、携帯電話で打ち込むには時間がかかりそうだ。
- 読売新聞2011/02/28 -
こういうことを書く筆者(おそらく老人)の認識不足ははなはだしいものがある。犯人はこういうことを事前に計画していたようである。昨年来から投稿して予行演習もしていたとのことである(朝日新聞2011/02/28)。それならばこんなことはお茶の子さいさいである。

数学で出てくるアルファベットや記号などはたかが知れている。頻出用語や数学記号などは事前に1文字程度の短い読みで辞書登録して呼び出せばよい。
「塾で出された問題です」「解答だけでなく途中計算もよろしくお願いいたします」などの定型文句も、事前に作成し保存しておけば簡単に呼び出せる。お得意の「コピペ」で実行すれば1秒もかからない。

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小中高の学校現場には、子どもたちに情報モラルに関する教育を徹底することも求められよう。
- 読売新聞2011/02/28の社説 -

学校教育で、多様化する情報を正しく理解し使える「情報リテラシー」育成の重要性がうたわれている。その中でも、不正利用は犯罪行為であることを改めて教えたい。
- 毎日新聞2011/03/01の社説 -
ピストルを渡しておいて、それを使うなと言っているのに等しい。こんな生ぬるい対策でこういうヤカラが根絶できると思っているところがオメデタイところである。

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今回発覚したものだけではなく、同様の不正がもっと広く行われている可能性もある。
- 毎日新聞2011/03/01の社説 -
これは大いにありうることだろう。しかし、今回は「ヤフー知恵袋」という一般的なところだったから発覚も速かった。これが、不正入試請負人のアングラサイト(そういうものがあるのかどうかは不明)だったらまず発覚はしないだろう。

飛行機に乗るときのチェックのようなものを導入して、携帯電話のような電子機器を入場段階で発見することは可能だろう。しかし、その設置には膨大な費用がかかるのが難点だというのが現実である。しかも、使用は年1回ほどの入試だけならなおさら導入は無理だろう。

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投稿者に寄せられた英訳の回答の一部が、インターネットの翻訳ソフトによるものとほぼ同一であることが28日、分かった。
- 共同通信2011/02/28 -
これなら、見て数分後にも回答できるだろう。答えるほうも他力本願で「コピペ」だったというのが笑わせる

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「監視なかった」と書き込み 京大入試でツイッターに
- 共同通信2011/02/28 -
ツイッターなどはニュースとして取り上げる価値はないが、監視がないということは、次のどちらかに行き着く。
  1. それほど信用されているということである。だから、不正はやめておこう。
  2. 「カンニングしほうだい」ということである。だから、何でもやってしまおう。
この「違いがわかる」人間をつくるのは、情報機器の操作に偏重した今のIT「手先」教育などでは到底無理な話である。


事件の結末

さて、この事件の結末は次のようなものである。
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京都大や早稲田大など4大学の入試問題が「YAHOO!JAPAN(ヤフージャパン)」が運営するインターネット質問掲示板「ヤフー知恵袋」に投稿された事件で、京都府警は3日、大手予備校「河合塾」仙台校に通う男子予備校生(19)(仙台市)を京大入試に関する偽計業務妨害容疑で逮捕した。
予備校生は「京大に合格したかった」と話し、「1人で携帯電話を使い、試験会場(教室)の自分の席から投稿した」と供述している。早稲田、同志社、立教の3大学の入試でも「問題を掲示板に投稿した」と認めており、府警は、具体的な投稿の手口や、他に関与した人物がいないかなどを追及する。捜査関係者によると、予備校生は、京大など4大学を受験。京大から任意提出を受けた予備校生の英語の答案のコピーと、掲示板への回答が似ていた。
- 読売新聞2011/03/04 -
大衆マスコミで「識者」と呼ばれる人種が、したり顔で、高機能携帯で写真を撮って外部の共犯者に転送した、写真から文字認識ソフトを使って文字化した、携帯のシャッター音を消していた、などのようなことを述べていた。

しかし、「予備校生が使っていたのはスマートフォンでなく、一般の携帯電話」(朝日新聞2011/03/04)だったという。文字の打ち込みなら、慣れれば簡単にできるという超基本をまったく認識していない時代遅れの老人のゴミ識者たちの的外れなコメントばかりだった。


そして、こういう大衆マスコミの中で最もいい加減な記事を書いていたのは産経新聞(大阪)、サンスポ(WEB版)である。犯人が東京の高校生2人の共犯であると断定し、その手口までまるで見てきたかのように事細かに書いていた。ゴシップ記事専門のタチの悪い根も葉もないインチキ記事を作って商売しているところというのは所詮はこんなものかもしれない1)
NOTES
1) 共同通信(2011/03/05)によると次のようである。
産経新聞、誤報で謝罪記事 「東京の高校生2人が関与」
入試問題の投稿事件で、産経新聞は「東京の男子高校生2人が関与した」とする大阪本社発行の2日付夕刊やインターネットの記事について「誤報だった」とする謝罪記事を5日、ニュースサイトと同日付夕刊に掲載した

- 2011/03/04 -







入試問題投稿事件/マスコミの度し難さ(fz_0021)
入試問題投稿事件/IT手先教育(fz_0019)