先の戦争をどう呼ぶか

戦没者の遺族が靖国神社への合祀の取り消しを求めた訴訟の判決が2009年2月26日に大阪地裁であった。このニュースはどの新聞社も報道している。その内容はさておき、そこで使われている用語に微妙な差異があるのがおもしろい。

毎年8月15日を終戦記念日とする「あの」戦争について、朝日新聞は「太平洋戦争」、毎日新聞と日経新聞は「第二次世界大戦」、読売新聞は「昭和戦争」と書いている。産経新聞には戦争という言葉は出てこない(戦争などなかったことにしたいのかも/笑)。

保守を標榜し、保守の論調を代表する読売新聞と産経新聞がいずれも、一般的または学問的に使われている「第二次世界大戦1)」または「太平洋戦争2)」という言葉を使っていないところが興味深い。

「昭和戦争」などという聞き慣れない言葉を聞くと、靖国神社がA級戦犯を「昭和殉難者」と呼んで戦犯色を薄めようとしていることを連想してしまうほどである。その根底では相通ずるところがあるのかもしれない。そこには、学問的に評価がほぼ定まっている「第二次世界大戦」や「太平洋戦争」という歴史の暗部を連想させるような言葉を使いたくないという意図が透けて見えてくる。

たかだか数文字の用語にすぎないが、こうして巧妙に世論操作は行われていく。さすが読売・産経は戦争をしたがる保守の論者を多く執筆陣にかかえているだけのことはあるようである(笑)。
NOTES
1) 第二次世界大戦は、現状打破を企てる日独伊の侵略に対して、英仏中ソ米などが連合国を形成して戦った戦争。
2) 太平洋戦争は、第二次世界大戦のうち、アジアでの日本と米英中など連合国との戦争。

- 2009/02/28 -