百年河清を待つに等しい選挙制度改革

2012年の12月の衆院選について東京高裁は違憲とする判決をしたという。スピーディな判決である。もっとも、かなり前から現行の選挙区割りは違憲状態だといわれてきたから、もう議論の余地はないという面もある。

一票の格差が最大で2.43倍になっているということは、ある地方の住民は別の地方の住民にくらべると2票以上も投票しているということである。これが不平等でなくてなんであろうか、そういう疑問はごく当然である。

一票の格差を是正しようとすれば当然「2票以上」投票している地域の議員数は減らさざるをえない。その地の国会議員はオマンマの食い上げという事態になる。しかし、それを決めるのは国会議員である。のらりくらりしていればいつまでも地位は安泰だ。選挙無効の裁判を起こされても、せいぜい「違憲」だといわれるのが関の山である。「無効」にされることはないとタカをくくっている。そんな国賊級の議員がウヨウヨしているからいつまでたっても、選挙と裁判のいたちごっこで、それが年中行事と化すことになる。

ところで、一票の価値の平等と民意の反映ということを言い出すと、これを実現するには全国レベルでの比例代表ぐらいしかない。しかし、比例代表も他の選挙制度と同じく長所もあれば短所もある。これが一本調子で採用されるにはまだまだ紆余曲折があるだろう。

この点について、自民党の出した選挙制度改革案は小選挙区の定数(5減後に295)は削らず、比例選出だけを30議席削減するという。しかし、問題の少ない比例代表を減らすのは理解しがたい。一票の価値の不平等の問題のほぼ全部は小選挙区で起こっているのである。これに手をつけないのでは一票の価値の不平等の是正はおぼつかないだろう。

また、比例代表の改革も、より死票の少ない全国レベルにせず、現在のブロックレベルは維持したままである。そして比例代表での30議席以上は第2党以下に優先的に配分するという。こうなると、民意の状態を他の制度に比べてより正確に反映するはずの比例代表に、民意以外の党利党略的な考慮が入ってくることになる。投票者の意思とは無関係に政党間で票の配分(取り合い)を決めているのと同じである。そうなると民意は今よりさらに無視されることになる。ひいては比例代表という制度の根幹もゆがめてしまう発想である。

つくづく、国会議員の考えることは、まず自分の身の安泰のようである。これでは一票の価値の不平等の解消は百年河清を待つに等しいだろう。

- 2013/03/06 -