民主党は空気が読めているか

最近の野党のだらしなさに触発されて思いつくままに書いてきたことの最後である。

どの政党であっても、その政策にしろ公約にしろ、そんなものはほとんど信用していない。それにもかかわらず、民主党のようなハッキリしない政党に投票する人がいるのはなぜか。その政策を支持しているからではない。ここを民主党は「わが党の政策を支持してくれている」と勘違いしているのではないか。

民主党は野党の中では最大勢力である。今のところ自民党の対抗勢力のコア(核)になるのはここしかない。一党独裁に近い政治はダメだという危機感と、それを打破するための一種の期待感のようなものだけで投票しているだけである。これは大局的な観点からみると、健全な二大政党を「育てる」ことが結果として良質な政治をもたらすという期待によるものである。

そういう大きな意識をくみ取ろうともせずに、小手先で技術的な政策の一致がどうのこうのと微視的(ミクロ)なことにこだわるのは、完全に「民意」とズレているといってもいいだろう。
憲法を歯牙にもかけない政治家が国会の圧倒的多数を占めている時代の現実。政治家がひとたび当選してバッジを付けたが最後、憲法も世論も、選挙公約も関係ない暴走が、いくらでも可能になる現行制度の欠陥。もっとも、そうした現実への無力感が骨身にしみる一方で、次の選挙を見ていろと悠長に構えているのは、この期に及んでなおも、安穏と生きていられた戦後日本の幻想を捨てられないでいるということだろうか。
- 高村薫「二〇一五年秋を記憶する」(岩波書店「図書」2015年11月号25p) -
多くの人は、特に今の政権のように、いかなる批判にも耳を傾けず、強権的な政治手法で押し切るのはよくないと感じている。そういう人が期待しているのは「次の選挙」でそういう政権を終わらせるための手段になるような対抗勢力の存在である。もうそれしか今の権力の「暴走」を止める方法はないからである。そういう「民意」を集約することが喫緊の課題であることが少しもわかっていないところが問題なのである。

こじれてこじれまわっている沖縄問題。もう出口が見つからないほどである。あれは前知事が選挙公約に反して2013年12月に辺野古周辺の埋め立てを承認したことが起点だった。その後、その決定をひっくり返すのがいかに困難であるかということの実例にもなっている。この例でもわかるように、「蟻の一穴から堤も崩れる」ではないが、一度どこかで突破口を開いてしまうと、もうその流れを止められなくなる。ひるがえって日本。憲法を実質的に破壊した(守らなくなった)権力は野に放たれたトラと同じである。放置しておけば肥大化して止まらない1)。いずれ深刻な害悪をもたらすだけになる。そういう危機感がまるでない。
NOTES
1) すでに臨時国会の召集を規定した憲法53条の規定「内閣は、その召集を決定しなければならない」を守らなくなっている。こうしてどんどん憲法を軽視無視していくことは確実である。その後に自民党に都合のいい復古調の憲法改正を押しつけることになる。

参考
参考資料/毎日新聞2015/11/08の社説(上とほぼ近い)

- 2015/10/31 -


民主党の甘さ/この党は何を考えているのか

ニュースの端々で漏れ聞こえてくる民主党幹部の発言からは、現状の認識が甘いのではないかという印象を受ける。
NEWS BOX
「どこに民主党がイエスなのか示したい」 民主・細野氏
民主党のあり方もこれからやや変えていく必要があると思う。安全保障法制、我々は政府案に反対した。憲法違反だし、地球の裏側まで戦争参加するのはやめた方がいい。反対してよかった。与党の暴走にブレーキをかけるのが野党の仕事ですから。しかし、民主党がノーと言うのはよくわかったけど、どういった政策を進めようとしているのか、イエスの部分がどこなのかということが、見えにくくなっているかもしれない。どこに民主党がイエスなのか、お示しをできるよう、模索していかないといけない。
- 朝日新聞2015/10/05 -
「反対」しただけでは足りない。今度はその反対を現実のものにするためには、それを撤廃するところまでいかないと意味はない。そのためには政権交代しないとダメだ。普通はそう考えるだろう。しかし、そこまでやる気はないようである。となると、単に「あの時」の反対は「反安保法案」ムードに乗りかかっただけのことか。と思われてもしようがないだろう。

それに、今さら「お示しをできるよう、模索」などとは笑止の限りである。まだこんな段階なのか。開いた口がふさがらない。昨日今日にできた「赤ちゃん」政党ではあるまい。結局、公党として政策はないというに等しいのではないか。

NEWS BOX
共産との連合政権「党内に賛成者いない」民主・長妻氏
(共産党との選挙協力の対応をめぐり、党内で意見が割れているとの指摘に)党内で違いはないと思っている。共産党が言う「連合政権」に賛成の人はいない。民主党議員が一致しているのは、30以上ある参院選の1人区で勝たなければ、参院の与野党逆転なんて夢のまた夢。(候補者の)一本化は共通認識だが、国民や民主党支持者から理解が得られるような形はどうあるべきか。いろんな知恵があると思うので、誠意を持って話し合えば着地できると思う。
根幹的な政策が相当一致しなければ国民の信頼は得られない。日米関係や外交課題など問題が起こったとき、ちぐはぐでは国民の期待に応えられない。基本的には一緒の政府や連立政権というのは考えられないと思う。
- 朝日新聞2015/10/30 -
共産党の言う「暫定的」が抜け落ちて単なる「連合政権」に変わっている。それは本格的な長期政権を単独に近い形で樹立できた場合の仮定の話であろう。正気の沙汰か。そんな夢のようなことが果たして可能なのか。少なくとも今の段階ではそんなことは無理だろう。そして、今求められているのはそんな政権ではない。結局は、候補者乱立で共倒れというパターンになるだろう。学習しない政治業者たちである。

ここから見てとれることは、何が何でも政権を取るというガムシャラな精神がないのである。そんなに政策が一致してるとは思われない自民公明がその点だけでつながっているのと対照的である。

ところで、政党と政党の間なら主張や政策に差があることは当然である。「根幹的な政策が相当一致しなければ国民の信頼は得られない」「ちぐはぐでは国民の期待に応えられない」というのは今の民主党そのものではないか。今でも民主党内部には自民党に近い右派から社民党(旧日本社会党)に近い左派までの考えの者がいて意見が一致せず、統一的な立場を打ち出せないのが実情である。そんな政党が、他党との政策の一致などと言える筋合いか。結局は、単に共産党(という名前だけ)が嫌いというだけのことではないのか。

また、憲法違反の安保法案廃案にする気はさらさらないようである。こんな中途半端な風見鶏(かざみどり)政党は信用されないことが基本的にわかっていない。「候補者の一本化」とはいうものの、政策は一本化せずに、単に共産党の票が欲しいという都合のいいことを考えているだけのものである。それで一本化しようなどとは無理であろう。また、それで「着地できると思う」などはもう甘すぎる認識である。

- 2015/10/31 -


民主党の甘さ/進んで万年野党とは情けない

野党のだらしなさには嘆かわしい。政策などはひとまず横において「権力にしがみつく」という一点だけでつながっている自民・公明は強固に結束しているのに対して、路線対立というもので離合集散・対立を繰返しているのは野党側ばかりである。
NEWS BOX
民主・岡田氏、連立構想撤回を 共産との選挙協力で
民主党の岡田克也代表は28日、さいたま市で講演し、来年夏に実施される参院選での共産党との選挙協力をめぐり、共産党が安全保障関連法廃止を目的とした暫定的な連立政権構想を撤回することが前提になるとの考えを示した。「参院選は政府をつくる選挙ではない。政権を共にするという前提を外してもらわないと話は進まず、条件は不要だ」と述べた。 連立政権構想については「非常に無理がある。安全保障など基本政策が違う政党が一緒になっても、強力な政権とは言えない」と指摘した。 枝野幸男幹事長も28日の会見で「理念や政策、政治手法を相当共有できなければ、政権は共に担えない」と語った。
- 共同通信2015/10/28 -
こんなことを言っているようでは民主党はいつまでたっても政権などは取れないだろう。「安全保障関連法廃止を目的とした暫定的な連立政権」であってもいいではないか。これさえ廃止すれば後はそんな政権には誰も期待はしていない。「暫定的」で雲散霧消したってかまわない。長期の連立政権などは誰も望んでいない。もっとも、かつてのように内部対立で自然に空中分解してしまうだろうと思うが(笑)。

ここぞというところで大同団結しなければ、万年野党化し、自民党永久政権への手助けをするだけである。憲法や法律を軽視し、強引で強権的手法が目立つ現政権に対して、アンチ自民の受け皿になるようなものを求めている人も多いはずである。

最近あった宮城県議会選挙で自民・民主が減り、共産党が躍進したのも対立図式がハッキリしていたからである。農村は保守の地盤である。自民は減ったといってもやはり人数は多い。共産が躍進といっても、絶対数が少ないから倍増したところで大した数にはならない。そんな中で、民主が減った原因を考えたのか。

ところで、民主党の「安全保障」についての「基本政策」とは何なのか。それが明確に伝わってこない。先に強引に成立した安全保障関連法には反対の立場だっのではないか。それ以前に、民主党は何を目指しているのか。これもハッキリ伝わってこない。安全保障や外交の問題は選挙の票に結びつかないという思い込みがあるから、それを曖昧にしてきたのではないか。

参院選は政府をつくる選挙ではない」なども、なにを寝とぼけたピントのずれたことを言っているのか。この問題は、自民党の前近代的で復古的な憲法改正案を阻止するために、参議院で改憲派の保守勢力に2/3以上を取らせないことが最大目標であろう。「~ではない」という否定的表現はまったくインパクトを与えないという認識がサッパリない。ついでにいえば、では「政府をつくる選挙」で勝てるような方策があるのか。今のままで勝てると思っているのか。その認識の甘さは救いがたい。

蛇足ながら、小選挙区制などは二大政党制のもとでしかその真価は発揮されない制度である。対立政党(野党)が分立していれば一党独裁を補強する機能しか果たさない。そんな政治のイロハも知らないドバカ野党では税金泥棒政治業者とのそしりは免れない。今のままでは民主党は座して死を待つのみであろう。

- 2015/10/30 -





民進党ラストステージ(fz_0121)