悪いヤツほど生き残る

「憎まれっ子、世にはばかる」というが、悪いヤツほど生き残るという例がまた出てきた。それにしても、こんな重大事故であるにもかかわらず、誰が飲酒していたかという基本的な事実が公表されるまで、なぜこんなに長い時間がかかったのか(事故は9月22日)、それが少し気になる。
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4人死亡事故、飲酒運転130キロで追突か 男性聴取へ
青森県つがる市の国道101号で9月、車4台が絡み4人が死亡した事故で、4台のうち1台の乗用車が飲酒運転の上に時速約130キロで暴走し、他の車に次々にぶつかったとみられることが、捜査関係者への取材でわかった。
- 朝日新聞2018/10/22 -

飲酒運転で速度超過 32歳容疑者を逮捕
事故は9月22日午前1時過ぎ、国道101号で発生した。現場は片側1車線の直線で、捜査関係者によると、高杉容疑者の車は前方を走っていた軽乗用車に追突した後、センターラインを越えて対向してきた別の軽乗用車に衝突した。 現場の制限速度は時速50キロだったが、これを大きく上回っていたとみられる。
この事故で、追突された軽乗用車に乗っていた広船淳さん(43)と妻愛莉さん(30)が死亡。対向してきた軽乗用車を運転していた代行運転手の山田春治さん(63)と客の山田久美子さん(46)も死亡した。高杉容疑者の車には他に男2人が乗っており、3人とも重傷を負った。
- 毎日新聞2018/10/22 -
片側2台ずつの4台の追突事故で後ろにいた1台が飲酒運転で事故を引き起こしたものである。ここでも死んだ4人は飲酒運転していない車に乗っていた人たちである。また対向車に乗っていて死んだ人たちは代行運転とその客だったというから皮肉なものである。自動車そのものは便利で有益。日常生活に必要不可欠なものだが、これを飲酒した者が使うと「殺人兵器」に変わる。「飲酒運転車」は外から見わけがつかないので余計に面倒である。たとえば、車内からアルコールが検出されると、車体の色が変わるなどの技術を開発して、周囲に知らせるなどの方策が必要なのかもしれない。

飲酒運転をしている側では、事故の予測とその場合の心構えができていて「コト」に臨んでいる。それで生き残る確率が高くなる(推測)。それに対して、とばっちりを受けて事故に巻き込まれた車にはそんなことは予想していない。想定外の不意打ちにあったのと同じだから、事故の被害も大きくなる。たとえば、これは日常生活でも、そこに「落とし穴」があることがわかっていて落ちる場合と、それを知らずに落ちる場合では、受けるダメージは知らずに落ちた方が大きい。あれと同じである。

ところで、この事件で気になったことは、「ネット上では、「酒気帯び夫婦」など、淳さんと愛莉さんを中傷する書き込みが相次いだ」(朝日新聞2018/10/22)ということである。どうやら、先頭にいた車が飲酒運転らしいという地元テレビ局の「思い込み報道(誤報)」によって、軽薄ネット民が事実も確認せずに「この夫婦が飲酒運転をしていたろと決めつけたようである。まるでお門違いな話で不可解な話だが、サルの多い「お国柄」を象徴しているような話である。

この点、かつて地方議会に赤ちゃんを連れてきた女性議員が問題になったことに対して、作家の赤川次郎は週刊誌に次のようなことを書いている。
驚くのは、この一連の内外の出来事を報じたネットの記事に対しての書き込みがほとんど「日本には日本のやり方がある」「議会は子育ての場ではない」といった、冷ややかな非難だったことだ。ネットに匿名で書き込みをする人々の「正義感」は、もっと重要な、国会の場で平然とうそをつく証人などには向けられないのである。
- 「女性自身」2018年10月30日号 -
多くの日本人の特性をよく表しているようである。今や、子供だけに限らず大人の世界においても、SNSやネット掲示板などは「弱い者いじめ」の場、「ウサ晴らし」の道具として使われているのが実態である。この交通事故の場合はもちろん「正義感」などはまったく関係がない(ただし中傷している側は「正義感」のつもりかもしれない)。ただ、おもしろく話のネタになりそうな「夫婦」をたたけ、という程度の軽い「ノリ」である。殺伐とした時代と風潮である。

この際、ついでに言わせてもらえれば、所かまわずタバコを吸う者がいる。これはもう「毒ガス」のまき散らしである。特に喫茶店などの狭いところではもう逃げ場所がない。わたしは一見して「古いタイプの老人」の近くは避けることにしている。ほぼ間違いなく傍若無人にタバコを吸い始めるからである。外では「殺人兵器」と「毒ガス」に囲まれて、内では「いわれなきバッシング」の嵐が襲ってくる。今や日常生活も「戦場」並みである(笑)。

- 2018/10/22 -