言葉は世に連れ

最近毎日のように聞く言葉は「クラスター」である。英語でclusterP.O.D.では Close group or bunch of similar people, animals, or things, esp. such as grow together ということになっている。
  1. これを最初に知ったのは受験生時代
    ブドウやバナナの「房(ふさ)」という意味だった。小さなブドウの実がたくさん集まって一房の大きなブドウになる。そんなイメージである。

  2. 次に知ったのは東西の冷戦時代
    クラスター爆弾という殺傷兵器がでてきた。普通の爆弾をブドウの房のように何個か寄せ集めて作った爆弾で、一回の投下でその殺傷能力は飛躍的に増大するというものである。

  3. そしてコンピューター時代
    フロッピーディスクやハードディスクの読み書きの基本的単位がクラスターだった。円盤型の記録装置の一周がレコード。それを何個かに細分化した物理的な最小単位がセクタ。そのセクタを効率的に読み書きするために何個かひとかたまりにしたものがクラスターである。

  4. 今の新型コロナウイルスの全盛時代
    何人かの人が同一の場所に一定時間集まったもの、すなわちグループや集団をいう。こういうところからウイルスなどが伝染しやすいということのようである。
    グループというと、そこに集まる人々の間に何か人間的な関係や意思的なつながりがあることを連想させるが、クラスターにはそんな意味合いはない。何人かに人がまったく何の意思の連絡もなく集まっていてもかまわない。そんなところからこちらの即物的な語の方が使われたのであろう。
    厚生労働省は「1カ所で5人以上のつながりのある感染者が出たケース」をクラスター(感染者集団)と定義している。
クラスターで感染すると言われても、分析的に考えれば基本は一人から一人へ(1対1)へ感染し、そのクラスターで見れば一人から多数へ(1対多)というだけのことである。別に人混みや集団の中でなくても、ウイルス感染者がいれば2人でいるだけでも感染はする。その意味では、どんなネーミングを使っても普通の感染症や伝染病と変わりはない。とにかく、相手はどこからやってくるかわからないから、予防に気をつけるしかないようである。

- 2020/03/01 -